解雇無効の怖さ
社員を簡単に解雇できると思っておりませんか??
経営者の方とお話しすると、「民法に規定されているから、2週間前に予告すれば自由に雇用を解約できるのでは」という話しを良く聞きます。
確かに、民法典においては、期間の定めのない雇用契約において2週間前に解約申し入れをすることができる旨規定されております。しかし、労働契約法第16条に「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とされる。」と規定されており、会社が持つ解雇の自由が制限されております。
そして、実務上、労働者の生活を保護するため、「客観的に合理的な理由」というのは非常に限定的に捉えられており、解雇が権原濫用として無効となるケースが非常に多いのです。
それでは、何故、解雇無効が恐ろしいのでしょうか。
例えば、平成22年2月末日付けである社員を解雇したとします。しかし、その後、当該社員が労働審判や労働裁判によって解雇無効を訴え、平成23年1月末日に裁判所が解雇無効の判決を下したとします。
すると、当該社員は、平成22年3月以降も社員の地位を認められるため、会社は、当該社員が仕事に従事していない平成22年3月1日以降平成23年1月末日までの給与を一括して支払わなければならず(ただし、時効の関係上、その上限は2年間分)、また、当該社員は会社に戻ってくるので、判決以降も雇い続けなければなりません。
すると、会社としては、当該社員が仕事に従事していない期間の給与を一括にて支払わなければならないうえ、当該社員の退職に伴い新たな社員を入社させていたとなると、人員過剰の状況も強いられる結果が到来するのです。
経営者の方においては、社員を解雇する前に必ず専門家の意見を尋ねることをお勧め致します。
サービス残業はありませんか
会社に在籍しているうちは、社員は嫌な顔をせずサービス残業を行っていることが多いのですが、いざ、会社を退職すると、昨日まで笑っていた社員が、これまでの残業代を求め会社を訴えるケースがよくあります。
すると、会社は、最大で過去2年分の未払残業代を支払わなければなりません。この点、会社は、社員がサービス残業をしているうちは、当該社員の残業業務の内容をチェックしていないことが多いため、不必要な残業代の支払いを強いられることもあり得るのです。
上記不必要な残業代の支払いを防止するためには、会社の労務管理が非常に重要となります。しかも、労働紛争に備えた労務管理を行っていれば、仮に、法的紛争になった場合に慌てることなく、会社としての毅然な態度を維持できるのです。
労働審判を申し立てられたら
スピード重視(すぐに専門家に相談することをお勧めします)
労働審判の特徴は何と言っても、迅速かつ柔軟な解決が可能であるという点です。
すなわち、労働審判は原則3回の審理で終了します。(労働審判の詳細な流れは、労働審判手続の流れを参照)【労働審判手続の流れ】
そのため、何より申立書を受領してから、答弁書提出期限まで、スピーディーに対応することが必要です。
労働審判の実際の運用では、第1回目の期日に労働者及び会社の言い分(主張)を労働審判委員会に伝え、第2回目の期日以降(事件によっては第1回目期日から)は、労働審判委員会が紛争解決に向けて、当事者の主張を調整する作業に入ります。
ということは、会社は、第1回目の期日まで(厳密には、第1回期日の前である答弁書の提出期限までです。)に会社の言い分(主張)を準備し、かかる言い分(主張)を根拠付ける資料(証拠)も提出しなければなりません。
しかも、資料(証拠)の提出については、単に労働紛争に関係する全ての資料を提出すれば良いというわけではありません。
すなわち、会社が労働紛争に関する膨大な資料をそのまま裁判所に提出すると、労働審判員は、膨大な資料を逐一確認しなければなりません。しかも、労働審判員は、裁判官ではなく証拠調べに慣れておりませんので、重要な証拠を読み飛ばしてしまう恐れがあります。よって、裁判所への資料の提出については、審判員が理解しやすいように資料を精査したうえで証拠提出する必要があるのです。
以上の準備を、労働審判が申し立てられた後、30日程度で行わなければなりません。
これらの作業は、法律に明るくない会社従業員が行うことは、能力的にも時間的にも非常に困難と言わざるを得ません。
そのため、労働審判を申し立てられた場合、早急に専門家に相談することをお勧めします。
専門家に依頼する場合でも、受任する専門家が上記準備をする時間も考慮するようにしてください。【弁護士費用】