労働審判の特徴

労働審判の特徴

Ⅰ.迅速な紛争解決

労働審判は、原則として3回以内の期日で審理を終結しなければなりません。そのため、長くても約3ヶ月程度で紛争解決(調停や労働審判)を図ることが可能です。
これは、職場復帰を求めたり、賃金の支払いを求めた労働者にとって非常にメリットであることはもちろん、会社側にも大きなメリットです。
すなわち、労働紛争は会社にとって身内の事件であり、長く関与することで、会社側の精力を費やすことや取引先の信用を損なう恐れがあります。また、解雇の有効性が争われた場合、長期間に及ぶ法的紛争の結果解雇が無効と判断されると、会社は、労働者が退職してから法的判断がなされるまでの期間分の賃金相当額を、かかる期間労働していないにもかかわらず、労働者に支払わなければなりません。したがって、迅速な紛争解決は会社側にとっても大きなメリットであるといえます。

Ⅱ.柔軟な紛争解決

通常訴訟において判決に至った場合、裁判官は、労働紛争における争点ついてオール・オア・ナッシングの判断を行います。
これに対し、労働審判手続においては調停が試みられます。調停とは、当事者間の合意に基づく紛争解決であるため、当事者間の合意によって、オール・オア・ナッシングでなく、紛争の実情に即した柔軟な解決が図ることが可能です。また、調停が成立しない場合に出される労働審判においても、通常訴訟ではできない柔軟な解決を示すことが可能です。
すなわち、労働審判は、

  1. 「労働審判委員会は、審理の結果認められる当事者間の権利関係及び労働審判手続の経過を踏まえて労働審判を行う」(法20条1項)
  2. 「労働審判においては、当事者間の権利関係を確認し、金銭の支払い、物の引渡しその他の財産上の給付を命じ、その他個別労働関係民事紛争を解決するために相当と認める事項を定めることができる」(法20条2項)

と規定されているため、権利関係を踏まえつつも、実情に即した解決をするために、労働審判の経過を踏まえて相当と認める事項を定めることができます。
例えば、労働者が合理的理由もなく解雇され、労働契約関係の確認を求める労働審判を申し立てたとします。その後、期日間で双方から意見を聞き、証拠を調べるなかで、労働者が不当に解雇されたことは判明したが、労働者が真に望んでいたのは、職場復帰ではなく、解雇が不当解雇であったことを確認したうえで、会社から補償金を支払ってもらうことで、会社側も金銭的解決を望んでいたとします。その場合に、不当解雇を認定しつつ、補償金の支払いを命じることができ、当事者双方の希望を取り入れた柔軟な解決方法をとることができます。以上のとおり、労働審判では、通常訴訟ではできない、オール・オア・ナッシングではない柔軟な紛争解決が可能です。

Ⅲ.実態に即した紛争解決

労働審判手続きは、労働裁判官1名と労働審判員2名(労働者側1名、使用者側1名)の3名で構成される労働審判委員会によって行われます。【労働審判員とは
そして、労働審判委員会の評議は過半数によって決定されますので、裁判官と労働審判員の判断が分かれた場合、労働審判員の判断が労働審判委員会の判断となります。
そのため、労働審判委員会の評議においては、労使関係や労働現場の実情等について十分な知識と経験を有する労働審判員の意見が取り入れられるのです。
よって、労働審判は、労使関係や労働現場の実情等を十分に取り入れられた実態に即した紛争解決といえます。
労働審判員とは

  1. 労働審判員は、労使それぞれから1名ずつ選任される。
  2. 労働関係に関する専門的な知識経験を有する者で、68歳未満の者の中から、最高裁判所が任命します。但し、例外的に68歳以上の者を任命することもできます。

裁判所は、予め任命された労働審判員の中から、事件ごとに労働審判員を指定しますが、指定に当たっては、労働審判員の有する知識経験その他の事情を総合的に考慮し、公正・的確に事件が処理されるよう労使のバランスを図って指定しなければならないとされています。

労働審判員は非常勤であり、法律・規則で定められた手当、旅費、日当、宿泊料が支給されます。なお、労働審判員にも秘密保持義務が課されており、労働審判員が職務上知り得た他人の秘密を漏らした場合、罰則規定があります。

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